|
|
お母さんと子供が、呼びつ答えつする様が、子供の側からこまやかに歌われています。対話の度合いと人間関係の濃さは、いつの時代でも正比例するのです。 道元禅師は |
|
と説いています。 愛情に満ちた言葉は、愛する心より生じ、その心は慈悲心(慈しみの心)が基となって起こるのです。そして心から愛情に満ちた言葉は、天を引き回すほどの力を持つというのです。 慈悲心が愛語を生み、それが相手の生涯の方向を左右するほどの力を持つのです。 |
父母恩重経(ぶもおんじゅう)という、お経があります。字の如く、両親の恩の深さを説いたものです。その中に、 「その母、子に乳を含ますに180斛(こく)をもってす」 と、あります。つまり、赤ちゃんが生まれてから乳離れするまでに、母親が与える乳は、全部で180斛(こく)にもなるというのです。1斛(こく)=1石(こく)=10斗(と)=180リットルです。一升瓶(しょうびん)は1.8リットルですから、1斛(こく)で一升(しょう)瓶100本分ということになります。その180倍もの母乳を子供は飲んで育つのです。母乳は、体温ともども、慈愛に満ちたまなざしに見守られ、<大きくなるんだよ><立派な大人になるんだよ>という願いを込めて与えられるから、ありがたいのです。 一方、親は子供が生まれたからこそ、親になれたのです。あなたが生まれた瞬間から、親はあなたと同じ時間を、親として過ごしているのです。人は皆、親の慈愛に支えられて大きくなり、また繰り返しの中で親とならせてもらうのです。 親となった以上は、子供を育てる一生の仕事があります。どんな子供に、大人にしようとそれは勝手ですが、やはり親の望むものは、いつの時代も一緒ではないでしょうか。笑いがあり、お互いを認めあえる家族・家庭でなくてはならないと思うのです。そうした生活を現在できることに対して、少しでもありがたいと思ったならば、自分を大切にしてくれた両親、夫婦とならせてくれた配偶者の両親、それぞれに恩を感じ、礼を尽くさなくてはなりません。恨み・つらみで相手にすると、同じものしか返ってきません。同じ返って来るなら、笑い声や笑顔の方が良いに決まっています。 生きているうち、働けるうち、日が過ぎぬうちに勤めましょう。 |
※ 相田 みつを(1924〜1991) 栃木県足利市出身 「自分の言葉・自分の書」にこだわり、独特のエッセイと書風で人気を博す。 『にんげんだもの』『おかげさん』『いのちいっぱい』などを出版。 平成三年十二月十七日 脳内出血により逝去 享年67歳 平成八年 東京・銀座に相田みつを美術館 開館 電話 <03>3575−0482 |
|