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「すべてのものは移り変わる」 これは絶対の真理です。誰しも、健康で長生きが一番良いのですが、いつかは最愛の人に別れを告げ、自分が手にした名誉や財産を残し、あの世に旅立つ日がやって来ます。いかに最先端の医療技術を駆使しようとも、死を免れることはできません。死を免れることができないならば、大切なのは《死を迎えるまでをどのように生きるか》です。

東大の名誉教授である鎌田茂雄氏は、次のように語っています。

「生命というものは、太古の原始生物から遺伝子を通じて、縦に繋がっている。一方、社会は横の繋がりで成り立っている。縦の系列と横の繋がりがあって、その中で「今」「ここに」自分が生かされているんです。別の表現をすれば、大海の水をお椀にすくうでしょ。これが人の一生。70年、80年たって、これを大海に戻す。それが「死」。その水が無くなったわけじゃなくて、大きな生命に帰っていくだけですよ。自分の生命をすくい上げてくれた、その誰かを「仏」と呼んでもいいし、人間を超えた力と言っても良いわけです」

人の死を、禅門では<新歸元(しんきげん)>と言い、浄土門では<新蓮生(しんれんしょう)>と言いますが、いずれもこの世に生かされていた私たちの生命が、宇宙自然の大いなる懐に還元されるのだという見方をする点では同じです。

同様にアメリカの思想家レオ・バスカーリアも、童話『葉っぱのフレディ』の中で、葉っぱも冬が来ると散って死ぬことを語っています。

死を怖がる葉っぱのフレディに、擬人化した友人のダニエルは、

「誰でもまだ経験したことが無いことは、怖いと思うものだ。でも、考えてごらん。この世界に変化しないものは、何一つ無いんだよ。春が来て、夏になり秋になる。葉っぱは、緑から紅葉して散る。変化するってことは、自然なことなんだ。君は、春から夏になる時、怖かったかい?。緑から紅葉する時、怖くなかったろう。僕たちも変化し続けているんだ。死ぬというのも、変わることの一つなんだよ」

と言いました。そこで、フレディはダニエルに

「僕は、生まれてきて良かったのだろうか?」

と、尋ねました。すると、ダニエルは

「僕らは春から冬までの間、本当によく働いたし、よく遊んだね。回りには、月や太陽や星がいた。雨や風もいた。人間に木陰を作ったり、秋には鮮やかに紅葉して、みんなの目を楽しましたりもしたよね。それは、どんなに楽しかったことだろう」

と、答えました。

その日の夕暮れ、金色の光の中をダニエルは枝を離れていきました。

「さよなら、フレディ」

ダニエルは、満足そうな微笑みを浮かべ、ゆっくり静かにいなくなりました。フレディは一人になりました。

「会うは別れの始め」と言います。今日の出会いが一生の最後だと思えば、いい加減なつき合い方はできなくなるでしょう。私たちの一瞬一瞬の出会いも、その一つ一つの積み重ねが自分の一生を形成していくのです。なのに、「今」をおろそかにして過ぎ去りしを後悔したり、未だ来たらざるに期待をするというのは、愚かでしかありません。釈尊も

「現在するところのものを、そのところによく観察すべし。揺らぐことなく、動ずることなく、それを見極め、それを実践すべし。ただ今日、まさになすべきことを無心になせ」

と説いています。でないと、いつの間にか齢を重ねてしまい、《後悔先に立たず》ということになります。

誰もが、<楽を願う怠け心>を持っています。でも、<楽を願う怠け心>に身を委ねていては凋落の一途です。いくら長寿になったとはいえ、自分の寿命がいつ終わるのかは、誰にもわかりません。もしかしたら、貴方に今夜突然「死」が訪れるかも知れないのです。まさに【生死事大(しょうじじだい)光陰不惜(こういんおしむべし)無常迅速(むじょうじんそく)時不待人(ときひとをまたず)】です。

そこで最も大切なのは、いつ「死」が訪れても後悔すること無く往けるように、常日頃から「ボヤボヤすな!今が残り少ない人生のラスト・ストレッチだ」と自らに叱咤激励し、何事にも前向きに臨むことなのです。そして、自分の人生に幕を引く時、「ありがたい一生だったなあ」と思えるようにしたいものです。
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