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私たちは日々の生活の中で、さまざまなことを考えています。困ったことがあればどのように解決したら良いかを思案し、すべきことがたくさんある時には優先順位を考えます。対人関係がうまくいかなければ、相手の気持ちを想像したりもします。いつも何かを解決したり、結果を出すために思索しています。一つのことに一つの答えを出し、また次のことに取り組んで結果を出していくのも大切ですが、答えを求めない思索も大切です。

人生を熱く語り合ったからといって、目の前の仕事が片付くわけではありません。人間関係が劇的に改善されるわけでもありません。でも、本当の人間力は、回り道や無駄だと思えることを体験し、どうでもよいことに想いを巡らせることで、養われていくように思います。これは、効率第一主義の現代人が最も苦手なことかもしれません。

歳 寒くして、 然(しか)る後(のち)に 松柏の彫(しぼ)むに 後(おく)るるを知る

という孔子の言葉があります。

これは「寒い冬になって初めて、松や柏のように葉を落とさない木があることに気がつく」という意味(ここでいう柏とは、柏槇のことでヒノキ科ビャクシン属のイブキのこと)です。人は、困難に直面した時に、本当の力量がわかる、というのです。

その人の本当の姿や実力は、常日頃の過ごし方に大きく関わってきます。当たり前のことはきちんとできるか?、良い習慣を身につけているか?、心に余裕を持っているか?、こうしたことで、差は歴然と生じるのです。

実践主義の孔子は、自由に思索に耽(ふけ)る時間を大切にしつつ、社会での心構えも説いています。それが〈君子の九思(きゅうし)〉です。

子、 曰わく。 君子に 九思 有り。
視(み)るには明(めい)を思い、 聴くには聰(そう)を思い、 色には温を思い、
貌(かたち)には恭(きょう)を思い、 言(ことば)には忠を思い、 事には敬を思い、
疑わしきには問を思い、 忿(いかり)には難を思い、 得(う)るを見ては義(ぎ)を思う。

まず、物を視る時には見誤らないように明らかにしょうと思い、物を聴く時には聞き間違いが無いように正しく聞き分けたいと思い、顔色は常に温かくありたいと思う、というのです。

次に、容貌や態度は恭しく上品でありたいと思い、言葉は誠実で言行が一致するようにと思い、仕事は慎重に間違いのないようにと思う、というのです。

疑問が生じた時には、躊躇(ちゅうちょ)せずに速やかに人に問うことを思い、腹が立った時には、腹立ち紛れの行ないをしたらどんな後難(ごなん)が起こるかを思い、利益が目前にある時には、これを得ることは道義にかなっているかどうかを思う、というのです。

この〈君子の九思〉は、至極当たり前のことのように思いますが、実践するのは難しく思います。思慮が穏やかで安定していると、外からの悪影響を受けにくくなります。自分を振り返る余裕も出てきます。これは君子のみならず、私たちにとっても大切なことです。

悩むこと、迷うこと、思うこと、想像すること、失敗することでさえも、真剣に取り組んだならば無駄は一つもありません。何事も、まず自分で思い考えることから始まります。孔子の言葉は私たちが忘れていたことを思い出させてくれます。慌ただしい世の流れの中で、少し歩みを止めて自己をふり返る時間を持ちたいものです。
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